展覧会/イベント

LIXILギャラリーでは2019年4月26日(金)~6月11日(火)の期間、「田中佐次郎展 -陶禅一如-」(とうぜんいちじょ)を開催します。
田中佐次郎氏は45年にわたり、漢詩を能くし仏教に帰依し唐津の人里離れた深山で作陶に専心しています。作品は茶陶を中心に"古唐津も高麗茶碗も超えた佐次郎唐津"と呼ばれ、高い人気を得ています。
今展では新作の茶碗や壷など10点を展示致します。


「田中佐次郎展 -陶禅一如-」に寄せて
田中佐次郎さんの陶房は、海抜700メートルの佐賀県浜玉町山瀬にある。山瀬は、かつて桃山の陶工が窯を築き唐津焼を焼いたところである。私が、その陶房を訪ねたのは、もう20年も前になるだろうか。そこで、佐次郎さんはいまも世俗を離れて作陶三昧の生活をしている。

佐次郎さんが山瀬に築窯したのは、山瀬下窯の物原で斑唐津に絵が描かれた陶片と出会ったからである。「朝鮮から連れてこられた陶工が、祖国を思い『侘しい、寂しい』と轆轤を廻す姿が、陶片から浮かび上がり、その場にしゃがみ込んでしまった」という話からは、若き日の非凡な感性が伝わってくる。

いま、佐次郎さんほど作陶に生き様を求める陶芸家はいない。それは、禅僧の修行を見るかのようである。「茶禅一味」とは、茶味と禅味が一体であることを伝える言葉だが、「陶禅一味」もまた然り。茶の湯は、風流な遊びであり、高尚な藝術であり、人間形成の求道でもあるが、それらすべてを備えることは難しい。佐次郎さんは、風流・藝術という面では書・漢詩・南画・茶の湯・茶花を深く学ばれており、人間形成という面では禅寺に参禅し在家得度を受けておられる。そういう意味では、広く藝道を極めた碩学の人である。

サブタイトルの「陶禅一如」は38歳で在家得度を受けた時、永平寺副監院 北野良道禅師により授かった文字で、陶工の精神練磨と禅の心は同体という意味である。佐次郎さんは、常々「物とはその人の思想が作る」と語っておられる。現代作家の造る高麗茶碗の殆どは模倣の域を出ないが、佐次郎さんの茶碗には独特な風格があり、誰の模倣でもない彼の美意識が貫かれている。


茶陶研究の第一人者である林屋晴三先生から「佐次郎さん、井戸を作ろうが、伊羅保を作ろうが、それは昔のコピーに過ぎないよ」と言われ、佐次郎さんはコンクリートに頭をぶつけて割れる思いをしたと聞く。この時のショックが分岐点となり、佐次郎さんの作品は180度反転、今日に及んでいる。佐次郎さんの作品が伝統的な唐津焼の枠を超えて、佐次郎唐津となったのは、それからのことである。その完成までには、韓国に窯を築き、1330度の高温で焼成するなど、様々な挑戦があったが、そのすべてを作品が物語っている。

本展には、「斑唐津」「無地唐津」「伊羅保」「朱雲」「玄黄」「青霄(せいしょう)」といった茶碗や「翠洋壷」「佛塔壷」「高坏」「陶板」「大皿」など、佐次郎唐津の最新作が展示される。その作品は、佐次郎さんのいまの心境を映して豪快かつ清烈で、余分なものを排してスカッとしている。

森 孝一(美術評論家・日本陶磁協会常任理事)


会期 2019年4月26日(金)~6月11日(火)
休館日 水曜日、5月26日(日)
開館時間 10:00~18:00
企画制作 株式会社LIXIL
入場料 無料

作家略歴

1937 福岡県北九州市に生まれる
1965 縄文・弥生土器を各地で発掘、ドルメン調査、手びねりを始める
1971 唐津古窯の発掘調査、作陶開始
1975 唐津市半田常楽寺境内に登窯を築窯
永平寺に於いて在家得度
1979 加藤唐九郎氏と面談し、教えを受ける
1985 しぶや黒田陶苑にて個展(以後、毎年開催)
1987 古窯地山瀬山中に登窯を移築、「山瀬窯」と定める
2003 韓国蔚山(ウルサン)市彦陽(オニャン)に半地上六連房式登窯を築窯、 「亀山(キザン)窯」と名付ける。7年間、焼き続ける
2009 ソウルロッテ百貨店にて日本人の陶芸家として初個展(10月23日~27日)
2011 日本橋三越にて「炎陽 四十周年 田中佐次郎展」
2014 スイス・ジュネーブにて、日本通商条約150周年記念「田中佐次郎展」
2016 ニューヨークにて「石黒宗麿・田中佐次郎二人展」
2019 日本橋三越にて「田中佐次郎 陶禅一如展」
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