展覧会/イベント

展覧会詳細
LIXILギャラリーでは2018年10月5日(金)~10月23日(火)の期間、中村康平展「思考の器」を開催します。
金沢の陶芸家の家に生まれた中村康平氏は、多摩美術大学彫刻科を卒業し、前衛的なオブジェ陶の旗手として活躍してきました。その造形作品はニューヨークのメトロポリタン美術館に所蔵されるなど、国内外で高い評価を得ています。
そしてこの十数年は、新たに抹茶碗を制作して人気を得ています。今展では中村氏が「思考の器」と呼ぶ茶碗約10点を展示します。


中村康平展 「思考の器」 に寄せて
前衛的なオブジェ陶の騎手として活躍していた中村康平は、この十数年、茶碗づくりに挑戦している。すなわち、中村が「思考の器」と呼ぶところの抹茶碗である。

「造形が現代的であるより、考えが現代の思想であることに意義を感じます。今、時代は近代の反省の意味合いもあり、日本文化再考、古典回帰の意識に目覚めているわけですが、陶芸家の私は古陶磁を<写す>のではなく、<引用>することでその意義を表現できると考えています」という一文には、中村の考え方がよく表れている。

中村は幾度か作品のスタイルを変えながら、最終的にはバロック様式を引用した極端に装飾的な作品を磁器土で制作していた。そのオブジェ作家が、「時代的にオブジェが面白い時代は終わる、これからは茶碗の時代が来る」と判断したことはとても興味深い。

では、中村の目指す「思考の器」とはなにか。先の一文によれば、「造形が現代的であるより、考えが現代の思想であること」という。造形が古いか新しいかではない、思想が現代に生きているかどうかだ、と問うているようだ。では、「考えが現代の思想である」とはなにか。それまでの伝世の高麗茶碗を手本として作る、本歌に近ければ近いほど良いとされる技術が主体の世界を超える一つの方法として、中村は自分なりの創意を持つ「思考の器」を創出した。

「ある瞬間に轆轤がキマル、粘土の中から魂が現れ、造形が命を持ち、生きた茶碗となる。うまい轆轤ではなく、いい轆轤の意味をこの瞬間に体得する」と中村はいう。

しかし、陶磁学者の林屋晴三氏は、「現代の名碗」(菊池寛実記念智美術館/東京)に中村が出品した井戸茶碗を認めながらも、私には「この茶碗はオブジェだよ」と言われた。中村の「思考の器」が井戸茶碗という形を借りたオブジェだとすれば、そこにこそ中村康平がいるような気がする。三輪休雪氏が「井戸茶碗に初めて表現を持ち込んだ」と評したのも、そういうことなのであろう。

例えば、三輪休雪氏の陶芸作品を支えているのは、彼の思想であり、作家精神である。しかし、現代陶芸においては、そうした作家精神は薄らぎ、作品自体にも魅力が感じられなくなった。大げさに言えば、個性喪失の時代なのである。

若き日、中村はバロック様式を引用した極端な装飾的な作品を制作したが、今は井戸茶碗の形を引用した「思考の器」を制作している。これは中村のパラドックス(逆説)である。今展には、井戸茶碗、青井戸茶碗、カセ黒楽茶碗、白楽茶碗(不二山)、伊羅保茶碗、刷毛目茶碗、粉引茶碗、三島茶碗など、創意の器が出品される。中村の作品は、優れた茶碗は優れたオブジェでもあることを証明している。そこに、この展覧会を行う意義があるように思う。

森 孝 一(美術評論家・日本陶磁協会常任理事)


  • 2018年10月 会場風景
  • 2018年10月 会場風景
  • 2018年10月 会場風景
  • 2018年10月 会場風景
  • 2018年10月 会場風景
    撮影:荻沼秀和
  • 2018年10月 会場風景
    撮影:荻沼秀和
  • 2018年10月 会場風景
    撮影:荻沼秀和
  • 2018年10月 会場風景
    撮影:荻沼秀和
会期 2018年10月5日(金)~ 10月23日(火)
開館時間 10:00~18:00
休館日 水曜日
入場料 無料
企画制作 株式会社LIXIL

作家略歴

中村康平

1948 中村梅山の三男として金沢に生まれる
1973 多摩美術大学彫刻科卒業
1979 文化庁第一回国内研修員に選ばれる
1984 「現代の陶芸Ⅱ いま大きなやきものになにが見えるか」(山口県立美術館/山口)
1986 「国際陶磁器フェスティバル美濃'86」(多治見・岐阜)
「大阪現代アートフェア'86」(大阪府立現代美術センター/大阪)
1988 「シガ・アニュアル'88 陶・生まれ変わる造形」(滋賀県立近代美術館/滋賀)
1989 「今日のクレイ・ワーク」(神奈川県民ホール/神奈川)
「'89八木一夫賞現代陶芸展」 グランプリ受賞(東京、大阪)
「国際陶磁器フェスティバル美濃'89」(多治見・岐阜)
1990 「日本のクレイ・ワーク」 国際交流基金(韓国/オーストラリア/マレーシア/インドネシア/タイ)
「朝日現代クラフト展」 招待(うめだ阪急/大阪、有楽町阪急/東京)
「セラミック・アネックス・シガラキ'90」(信楽伝統産業会館、滋賀県立近代美術館ギャラリー/滋賀)
1991 「国際現代陶芸展 変貌する陶芸」(滋賀県立陶芸の森/滋賀)
「『土・メッセージ』IN美濃」(多治見市文化会館/岐阜)
1992 「国際コンテンポラリーアートフェア」(パシフィコ横浜/神奈川)
「日本の陶芸『今』100選展」(三越エトワール/パリ・フランス、本支店巡回)
「陶芸の現代性」(神戸西武/兵庫、西武池袋/東京)
「日本六古窯陶芸選抜展」(瀬戸市文化センター/愛知)
「名古屋市民芸術祭'92 陶―空間の磁場」(名古屋市民ギャラリー/愛知)
「International Exhibition of Ceramic Art」(国立歴史博物館/台湾)
1993 「現代の陶芸 1950-1990」(愛知県美術館/愛知)
1994 「国際現代陶芸展」(愛知県陶磁美術館/愛知)
1996 「Contemporary Ceramic Art」 (メトロポリタン美術館/ニューヨーク・アメリカ)
「陶芸ジャパン」(大阪国際見本市/大阪)
「日本の工芸『今』100選展」(三越エトワール/パリ・フランス、本支店巡回)
「日本現代陶芸―前衛の動向」(ファン・ボンメル・ファン・ダン・フェンロ市立美術館/オランダ)
2005 「アルス・ノーヴァ―現代美術と工芸のはざまに」(東京都現代美術館/東京)
2009 「大地の芸術祭 越後妻有トリエンナーレ」(十日町・新潟)
2012 「工芸未来派」(金沢21世紀美術館/石川)
2013 「現代の名碗」(菊池寛実記念智美術館/東京)
2016 「工芸未来派」(ミュージアム・オブ・アーツ・アンド・デザイン/ニューヨーク・アメリカ他)
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