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STORY 4

「第3空間」の発展

STORY 4

「第3空間」の発展

Guest bathroom of coal mining tycoon Takatori Koreyoshi’s residencein Saga prefecture, built in 1905.
明治38(1905)年に建てられた佐賀県の炭鉱王・高取伊好の邸宅の上便所。旧高取邸・佐賀県唐津市(Former Takatori Residence, Saga © Katsuhisa Kida)
  • 1980年代、INAX社長(当時)の伊奈輝三は、お風呂やトイレはこれから注目されるべき「第3空間」であるというコンセプトを打ち出しました。それまで日本の住まいのインテリアといえば、リビングやダイニング、キッチンが中心であり、お風呂やトイレといった水まわり空間の役割は、主に身体を洗う、排泄をする、などの機能性に限られていました。伊奈はもっとお風呂やトイレに光を当て、単なる機能としての空間から、美しく、快適で、安らげる空間に変えることを提案しました。

  • Guest bathroom of coal mining tycoon Takatori Koreyoshi’s residencein Saga prefecture, built in 1905.
    明治38(1905)年に建てられた佐賀県の炭鉱王・高取伊好の邸宅の上便所。旧高取邸・佐賀県唐津市(Former Takatori Residence, Saga © Katsuhisa Kida)
  • 日本では、美しく快適なトイレやお風呂空間をつくるということ自体、必ずしも新しいコンセプトではありません。明治時代、陶器製の洋式便器が到来すると、それまでの木製に代わり、陶磁器製の便器がつくられるようになります。全面に、白地に藍色の染付(そめつけ)で花鳥風月を描き込んだ華やかな便器が富裕層の間で人気を博しました。彼らのなかには、日本特有のおもてなしの精神をもって、美しいタイルとともにこの染付便器を設置した客人用お手洗い「上便所(かみべんじょ)」を設けることもありました。日本美の再発見者として知られるドイツ人建築家ブルーノ・タウトは、訪日の際、そのような来客用の上便所と、家族や使用人が使用する普通の便所が別にあることに感心したと書物に残しています。

  • 今日、日本の住まいづくりの中心は、「客人をもてなす空間」から「家族が過ごす空間」へと変化をとげてきています。しかし住空間をより美しく、より快適にしたいという人びとの思いに変わりはありません。LIXILは「第3空間」のさらなる発展を求めて継続的に技術革新を進め、より快適な住まいづくりを提案し続けています。

青と白、染付古便器の粋

明治時代、花鳥や草木などの文様を「青と白」で華やかに描いた染付便器が富裕層の心を捉え、一世を風靡しました。ここにINAXライブミュージアムの収蔵品のなかから選りすぐられた逸品を紹介します。

「第3空間」のショールーム ─ XSITE

昭和61(1986)年、INAXは都心のビジネスと文化を融合した複合施設内のオフィスビル37階に、画期的なショールーム「XSITE(エクサイト)」をオープン。当時、まだとかく汚いものと扱われがちだったトイレに対する人びとの認識を刷新し、美しいインテリアとして捉えてもらうことを目的として、世界10カ国30社から集めた便器、洗面台およびバスタブ約800点を展示しました。XSITEの開設は、お風呂とトイレを必要最低限の機能空間から、豪華で快適な空間へと進化させる「第3空間」の先駆けとなりました。

赤坂アークヒルズ(東京)で展開されていたINAXのショールーム「XSITE(エクサイト)」(© LIXIL Museum)
ドイツ出身の工業デザイナー、ルイジ・コラーニのデザインによるVilleroy & Boch社製のトイレ。XSITEで展示(© LIXIL Museum)
フランスの金属製洗面台等のメーカー、JANDELLEParis社製の銅製洗面台。XSITEで展示(© LIXIL Museum)

トイレの技術革新

(© LIXIL)

昭和42(1967)年に初の国産シャワートイレを発売して以来、LIXILはお客さまの視点に立ち、「こういうものが欲しかった」と思っていただけるような新しい機能を加えるべく、常にトイレの技術革新を進めてきました。平成13(2001)年には、トイレ空間をより広くて快適なものにするために、世界最小のタンクレス・トイレを開発。制御回路や全体のレイアウトをすべて見直し、新機能を搭載しながら機能部分のコンパクト化を実現しました。

(© LIXIL)
LIXILは便器に近づくと自動で蓋が開き、離れると閉まる「フルオート便座」を業界で初めて開発(© LIXIL)

LIXILではよりよい暮らしとより快適なトイレを目指し、快適性、掃除のしやすさ、操作性、脱臭、節水、そして美しさといったさまざまな観点から、トイレのイノベーションを続けています。

(© LIXIL)

「100年クリーン」 ─ LIXILの最近の発明の一つが、水アカや細菌の蓄積を防ぎ、白さと輝きが100年以上続く画期的なトイレのための新素材です。このような製品開発を通し、LIXILは限られた地球の資源を大切にしながら、日々の家事労働の負担を減らす取り組みを続けています。お風呂やトイレといった第3空間は、技術革新によって進化を続け、今日の日本の住まいのなかでますます重要な空間となっています。

お風呂好きな日本人の入浴文化

(© LIXIL)

日本人は世界に類を見ないほどの「お風呂好き」だといわれることがあります。数多くの活火山が連なる日本列島には、全国津々浦々に成分豊かな天然温泉が点在し、日本人は古くから温泉浴を楽しみとしてきました。

(Beppu Hot Springs, “Umi Jigoku,” Oita © Yasuhiro Okawa)
  • 入浴の習慣のはじまりは、6世紀の仏教伝来に遡(さかのぼ)ります。沐浴(もくよく)の功徳を説いた仏教の教えが広まり、身体を洗い清めることは仏に仕える者の大切な業と考えられるようになりました。仏教寺院では施浴が盛んに行われ、公共のお風呂という文化が育まれました。江戸時代に入ると、庶民の憩いの場として銭湯が繁盛するようになります。銭湯は足を浸す程度の湯をはった蒸風呂が中心でしたが、慶長年間(1596~1615)の末ごろには肩まで湯に浸かる「据(す)え風呂」も登場しました。その頃の銭湯は、蒸気を逃さないように入り口が小さい構造になっていました。

  • 大正時代に入ると銭湯の様式は著しく改良され、入り口は広くなり、湯量が増え、全体に明るい空間になりました。さらにタイルの普及とともに、木造だった洗い場や浴槽は、徐々にタイル張りになっていきます。銭湯の壁は、手描きのペンキ絵やモザイクタイルを用いた壁画で飾られました。空間が広く感じられ、また旅行気分も味わえる富士山や風光明媚な海岸線、ヨーロッパの山々などが好んで描かれました。

明治27(1894)年に建てられた群馬県の法師温泉長寿館。国登録有形文化財(Hoshi Onsen Chojukan, Minakami, Tochigi © HIROSHI KURODA / SEBUN PHOTO / amanaimages)
東京の銭湯「富久の湯」。モザイクタイルで描かれた松林の先に広がる海の景色が、屋外にいるような開放感を醸し出す。左:男風呂、右:女風呂(Sento“Fukunoyu”in Tokyo,)

内風呂の発展

戦前の日本では、庶民は銭湯に通うのが当たり前で、内風呂(自宅の風呂)に入るのは裕福な家庭に限られていました。20世紀の初頭、内風呂は主に木製か鉄製でしたが、陶器の普及によりタイル張りのお風呂が好まれるようになりました。日本人は明治維新とともにさまざまな西洋の生活様式を取り入れていきましたが、お風呂に関しては洗い場で汚れを流してからお湯に浸かるというスタイルを維持し、日本独自の入浴文化が発展していきました。

戦後の住宅需要の急激な高まりにともない、1950年代に内風呂つきの集合住宅が建設され、内風呂をもつ家庭が一気に増えました。木製のお風呂を一つひとつ手でつくるという作業はもはや現実的ではなくなり、ステンレス製の浴槽が大量生産され、その後ポリバス(FRP浴槽)が昭和33(1958)年に開発されました。ポリバスの導入により、システムバスルームの開発及び量産化が進み、内風呂が大きく普及していきました。

花柄の「本業タイル」で埋め尽くされた浴室。木製の風呂桶は、江戸時代から1960年代まで主流であった。愛知・窯垣の小径資料館
(Kamagaki-no-komichi Museum, Aichi © Yasuhiro Okawa)
タイルの浴槽の内風呂。写真は昭和28(1953)年に撮影
(© LIXIL Museum)
ポリバスの内風呂。写真は昭和40(1965)年に撮影
(© LIXIL Museum)
(© LIXIL)

今日の家庭のバスルームは、単に身体を洗う場所ではなく、広々とした癒しの空間となってきています。より快適に入浴するために、浴槽の傾斜までが計算されています。LIXILでは幅広いお風呂のラインアップを提供し、なかにはやわらかな湯が首から肩にかけて流れ、血行を良くし、美容と健康を促進させるラグジュアリー・バスといったものもあります。技術革新に終わりはなく、LIXILは今後も究極のリラクゼーションを実現する快適なお風呂を追求していきます。

平成24(2012)年のミラノサローネで紹介したフォームバスのインスタレーション展示(© LIXIL)

平成27(2015)年、世界最大級のバス・トイレの国際見本市ISH会場にて、GROHEが展示して多くの目を引いたフォームバス。お湯を循環させてつくる温かいクリーム状の泡につつまれるという、LIXILの研究開発チームが考案したコンセプト・バスです。温かい泡は温度も形状も長持ちするため、少ないお湯で快適に入浴できます。環境にやさしいだけでなく、何時間でもお風呂に入っていたいお風呂好きの人びとに、温かい泡に包まれながら本を読んだり映画を見たりする至福の時を提供するフォームバス。LIXILの発想の豊かさと飽くなきイノベーション追求の一例です。